こんにちは、埼玉県熊谷市でiPhone・iPad・Android端末の基板修理を専門に行っているストックリペアです。今回は、神戸市のお客様から郵送でご依頼いただいたASUS Zenfone9の起動不良について、修理の全過程を技術者目線で詳しくレポートいたします。
ご依頼の経緯
個人のお客様から「Zenfone9が急に起動しなくなってしまった」とご相談をいただきました。神戸市からわざわざ郵送でお送りいただき、端末内部に保存されている大切なデータを何としても取り出したいというご要望でした。
お客様のお話によると、初めのうちは使用中に画面がフリーズし、その都度再起動が発生していたものの、まだ操作は可能だったとのこと。しかし、症状が徐々に悪化していき、最終的には全く起動しない状態になってしまったそうです。こうした段階的な症状の悪化は、基板レベルでの接続不良が進行している典型的なパターンです。
初期診断:電流値から見る異常
端末を受け取り、まずは基本的な診断から始めます。充電器を接続し、電源投入時の電流値を測定しました。正常なスマートフォンであれば、起動時には500mA以上、場合によっては1A近い電流が流れるはずです。
ところが、今回のZenfone9では150mA〜200mA程度しか電流が流れていませんでした。この数値は明らかに異常です。端末が起動シーケンスの途中で止まってしまい、必要な電力を引き出せていない状態を示しています。
画面には何も表示されず、バイブレーションなどの反応もありません。外部からの診断だけでは詳細な原因特定は困難なため、内部基板の直接調査が必要と判断しました。
分解とメイン基板の取り出し
Zenfone9の分解作業に入ります。背面パネルを慎重に取り外し、内部構造を露出させます。バッテリーコネクタを外し、各種フレキシブルケーブルを丁寧に取り外していきます。
スマートフォンの分解は、小さなネジや繊細なケーブルが多数使用されているため、一つ一つの作業を正確に行う必要があります。特にZenfone9のような最近の機種は防水構造になっているため、接着剤で強固に固定されている部分も多く、損傷を与えないよう細心の注意を払いながら作業を進めました。
メイン基板を取り出したら、まずは顕微鏡下で詳細な観察を行います。基板表面に物理的な損傷や焦げ跡、腐食などがないかをチェックしましたが、外観上は特に異常は見当たりませんでした。
基板への直接給電テスト
次に、メイン基板単体での動作確認を行います。基板に直接電源を接続し、起動を試みました。この方法では、バッテリーやディスプレイなど他の部品の影響を排除して、純粋に基板自体の動作を確認できます。

電源を投入すると、電流計の針が動き始めました。しかし、0.15アンペア(150mA)の位置で針が止まってしまいます。これは端末が起動プロセスの初期段階で停止していることを明確に示しています。
正常であれば、CPUが起動し各種チップが初期化され、徐々に電流値が上昇していくはずです。ところが今回は、その最初の段階でストップしてしまっているのです。
サーモグラフィーによる熱源調査
さらに詳しく調査するため、サーモグラフィーカメラを使用して基板の温度分布を観察しました。通常、何らかのチップがショート状態にあったり異常動作をしている場合、その部分が局所的に発熱するため、サーモグラフィーで「ホットスポット」として検出できます。
ところが、今回の基板では全く熱を発している箇所がありませんでした。これは「どこかが異常発熱している」のではなく、「そもそも回路が正常に動作を開始できていない」ことを意味します。CPUや電源管理ICが起動前の段階で停止している可能性が高いと判断しました。
Snapdragon 888の持病:はんだクラック
ここで、Zenfone9に搭載されているSoC(System on Chip)について触れておく必要があります。この機種には「Snapdragon 888」というQualcomm社製の高性能チップが搭載されています。
Snapdragon 888は、2021年にリリースされたフラッグシップ向けのモバイルプロセッサで、5nmプロセスで製造された非常に高性能なチップです。しかし、修理業界では「Snapdragon 888搭載機は起動不良を起こしやすい」という事実が広く知られています。
この問題の主な原因は、チップと基板の接続部分に発生する「はんだクラック」です。Snapdragon 888は高性能ゆえに発熱量が多く、使用中の温度変化によってBGA(Ball Grid Array)実装部分のハンダに熱応力が繰り返し加わります。その結果、微細なハンダボールに亀裂が入り、電気的接続が不安定になったり完全に断線してしまうのです。
お客様の症状の変遷——初期のフリーズや再起動から徐々に悪化し、最終的に起動不良に至ったという経過は、まさにはんだクラックが進行していく典型的なパターンと一致しています。
CPU再実装の決断
以上の診断結果から、今回の起動不良の原因は「Snapdragon 888のはんだクラック」である可能性が極めて高いと結論づけました。この場合の解決策は、CPUを一度基板から取り外し、再実装(リボール)を行うことです。
CPU再実装は基板修理の中でも特に高度な技術を要する作業です。失敗すれば基板やCPU自体を破損させ、修理不可能になるリスクもあります。しかし、お客様の大切なデータを救い出すためには、この作業を行うしか方法はありません。
CPU再実装作業の実際
まず、基板上のシールド部品や周辺コンポーネントを取り外し、CPUへのアクセスルートを確保します。次に、専用の基板リワークステーション(加熱装置)を使用して、CPU部分を適切な温度プロファイルで加熱していきます。
温度管理は非常に重要です。温度が低すぎればハンダが溶けず、高すぎれば基板やCPU内部を破損させてしまいます。赤外線温度センサーでリアルタイムに温度をモニタリングしながら、段階的に加熱を行います。
ハンダが溶融する温度に達したら、専用の治具を使ってCPUを慎重に取り外します。


リボールと再実装
取り外したCPUの裏面に残っている古いハンダをきれいに除去します。同様に、基板側のパッドも清掃し、新しいハンダが適切に接合できる状態に整えます。
次に「リボール」作業です。専用のステンシル(型板)を使用し、CPU裏面に数百個の微細なハンダボールを正確に配置していきます。ハンダボールのサイズや配置精度が不十分だと、再実装後に接触不良を起こしてしまうため、顕微鏡下で慎重に作業を進めます。
リボールが完了したら、CPUを元の位置に正確に配置します。位置決めには専用の治具を使用し、わずかなズレも許されません。再び加熱装置で適切な温度プロファイルにて加熱し、ハンダを溶融させてCPUと基板を接合します。


動作確認とデータ復旧成功
CPU再実装が完了したら、いよいよ動作確認です。基板に電源を接続し、電流計を観察しながら電源を投入します。
すると、今度は電流値がスムーズに上昇していきます!0.15Aで止まっていた針が、0.3A、0.5Aと増加し、起動シーケンスが正常に進行していることが確認できました。基板をディスプレイに接続すると、見事にASUSのロゴが表示され、Android OSが起動しました。
さらに重要なのは、お客様の大切なデータです。内部ストレージにアクセスしたところ、写真、動画、連絡先、アプリデータなど、すべてのデータが無事に保存されていることが確認できました。お客様にとって何よりも優先度の高かったデータ復旧に成功したのです。


Zenfone9、Zenfone8、Zenfone8 flip は29700円で基板修理対応可能です。
郵送修理の流れと安心のサポート
今回のように遠方のお客様からのご依頼でも、当店では郵送修理に対応しております。神戸市から埼玉県熊谷市まで、安全に端末をお送りいただき、修理完了後は同様に郵送でお返しいたします。
郵送修理の流れは以下の通りです:
- お問い合わせ・症状のヒアリング:メールやLINEで症状を詳しくお伺いします
- 端末の郵送:適切な梱包方法をご案内し、安全に送付いただきます
- 診断・お見積り:端末到着後、詳細診断を行い修理内容と費用をご連絡します
- 修理作業:ご承認後、速やかに修理作業を開始します
- 動作確認・返送:修理完了後、十分な動作確認を行い返送いたします
全国どこからでもご依頼可能ですので、お気軽にご相談ください。
修理後の注意点とアドバイス
今回の修理で端末は正常に動作するようになりましたが、Snapdragon 888の構造的な発熱特性は変わりません。再発リスクを低減するため、以下の点にご注意ください:
- 長時間の高負荷使用(ゲームや動画編集など)を避ける
- 端末が熱くなった場合は使用を控え、冷却する
- できるだけ早くデータのバックアップを取る
- 必要に応じて端末の買い替えも検討する
基板修理は、データ復旧を最優先とした「最後の手段」としてお考えいただくのが良いでしょう。
まとめ:スマホ基板修理とデータ復旧のプロフェッショナル
今回のZenfone9修理実例では、Snapdragon 888特有のはんだクラックによる起動不良に対して、CPU再実装によってデータ復旧に成功しました。電流値測定、サーモグラフィー調査、顕微鏡観察など、様々な診断手法を駆使して原因を特定し、高度な基板修理技術で大切なデータを救い出すことができました。
ストックリペアでは、各種スマートフォンの基板修理・データ復旧を承っております。
- 突然起動しなくなった
- 大切な写真や連絡先を取り出したい
- メーカー修理ではデータが消えると言われた
- 遠方だが修理を依頼したい
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。iPhone、iPad、Android端末問わず、郵送修理に対応しており、全国からのご依頼をお受けしています。
埼玉県熊谷市のストックリペアまで、お気軽にお問い合わせください。お客様の大切なデータを守るため、全力でサポートいたします。
店舗情報
ストックリペア
所在地:埼玉県熊谷市
専門分野:iPhone・iPad・Android基板修理、データ復旧
対応エリア:店頭修理・郵送修理(全国対応)
修理実績:スマホデータ復旧、スマホ基板修理、各種起動不良対応
ラインで簡単問い合わせ!
最後に
iPhoneの起動不良や充電が出来ない、リンゴループになってしまった、
端末を水没してしまって電源が入らなくなってしまったなどお困りの場合は
当店にご相談下さい。
iPhone・iPadは急に電源がつかなくなってしまう場合が時としてあります
その場合でも端末内部の基板にはデータが残っていますのでデータはあきらめないでください。
当店にご相談頂ければデータ復旧可能です。
端末内部には大切な写真データやお仕事で利用しているものなどもあると思います、
直ぐに対応してもらいたい場合も柔軟に対応可能です。
全国のiPhone修理店でiPhoneの基板修理が対応可能なわけではありません、
ほとんどは基板修理を受け付けを行ってから修理のできる会社や店舗に依頼しています。
当店ではそのような依頼も受けています。数少ない基板修理対応の店舗です。
直接ご依頼いただける場合は優先的に対応しております。お急ぎの場合はまずご相談ください。
修理店様からの代行修理依頼可能です。
基板修理以外のiPad代行修理や任天堂switch修理、androidスマホ修理も対応可能です。
[対応機種]
iPhone・iPad・androidスマホ・任天堂Switch
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