ストックリペア

Xperia 5 Ⅲ 突発的起動不良の基板修理事例 – 2層基板の複合的故障をデータ復旧成功


埼玉県熊谷市のストックリペアです。
今回は、修理店様からのご依頼で、Xperia 5 Ⅲ(エクスペリアファイブマークスリー)が突然起動しなくなったという案件を承りました。
お客様の大切なデータが端末内に保存されているとのことで、データ復旧を最優先に基板修理を実施しました。その詳細な診断と修理プロセスをご紹介いたします。

故障発生の経緯:使用中のフリーズから起動不良へ

お客様からお聞きした故障の経緯は、端末使用中に突然画面がフリーズしてしまったため、再起動を試みたところ、その後まったく起動しなくなってしまったというものでした。このような「再起動後に起動しなくなる」症状は、基板レベルの深刻な故障を示唆していることが多く、慎重な診断が必要です。

フリーズ自体はソフトウェアの問題で発生することもありますが、再起動後に完全に起動不可能になるケースでは、ハードウェア、特に基板上の重要なチップに問題が発生している可能性が高いと考えられます。

初期診断:異常な電流値と充電ランプの色

まず基本的な診断として、充電器を接続して電流の流れを測定しました。正常に動作する端末であれば起動時に十分な電流が流れるはずですが、今回のXperia 5 Ⅲでは約150mA程度しか電流が流れていませんでした。この数値は明らかに異常で、端末が正常な起動プロセスに入れていないことを示しています。

さらに注目すべき点として、充電ランプの色の異常がありました。通常、Xperiaシリーズは充電中や電源オフ時の充電では赤いランプが点灯しますが、今回は白く光っていました。この異常なランプの色は、端末が正常な充電モードに入れず、エラー状態にあることを示す重要なサインです。

これらの症状から、単純なバッテリー不良やソフトウェアの問題ではなく、基板レベルの重大な故障であることが明確になりました。

分解作業とメイン基板の取り出し

診断を進めるため、端末の分解作業に入ります。Xperia 5 Ⅲは防水構造を持つ精密な端末で、分解には細心の注意が必要です。背面パネルを慎重に取り外し、内部のコネクタ類を一つずつ丁寧に外していきます。

バッテリーコネクタを切り離した後、ディスプレイケーブル、カメラモジュール、アンテナ線など、基板に接続されているすべてのパーツを取り外します。その後、固定ネジを外してメイン基板を端末本体から取り出しました。

基板を単体で取り出すことにより、より詳細な検査と修理作業が可能になります。端末に組み込まれた状態では確認できない基板の裏面や側面も、取り出すことで360度あらゆる角度から検査できるようになります。

Xperia 5 Ⅲ基板修理

顕微鏡による精密検査と基板への直接給電テスト

取り出したメイン基板を顕微鏡下で詳細に観察しました。基板修理において顕微鏡は欠かせない道具です。スマートフォンの基板には0.3mm以下の微細な部品が密集しており、肉眼では確認できない損傷やはんだクラック、腐食などを発見するには顕微鏡が必須です。

初回の顕微鏡検査では、外観上明らかな物理的損傷は見られませんでした。水没痕跡や焦げ跡、欠損部品なども確認されません。このような場合、問題はより内部的、つまりチップレベルの接続不良である可能性が高まります。

次に、基板単体の状態で直接電源を供給し、起動を試みました。しかし結果は同じで、電源が入る様子はまったくありませんでした。電流測定でも約150mAで停止し、起動シーケンスの初期段階で処理が止まっていることが確認されました。

Xperia 5 Ⅲ基板修理

第一段階の修理:CPUはんだクラックへの対応

これまでの診断結果と、Xperia 5 Ⅲの基板構造に関する知識、そして過去の修理経験から、CPUのはんだクラックが発生していると判断しました。

はんだクラックとは、チップと基板を接続しているはんだ接合部に微細なひび割れが生じ、電気的接続が失われる現象です。スマートフォンは日常的に落下や振動、温度変化にさらされており、特に大型で発熱量の多いCPUチップははんだクラックが発生しやすい部品です。

CPUは端末の中枢を担う最も重要なチップで、ここに接続不良があれば当然起動することはできません。そこで、CPU再実装作業を実施することにしました。

CPU再実装とは、基板からCPUチップを一度取り外し、はんだボールを新しいものに交換(リボール)してから再度基板に実装(リフロー)する高度な技術です。熱風リワークステーションを使用し、適切な温度プロファイルで基板を予熱してからCPUを慎重に取り外します。

取り外したCPUと基板側のランド(接続パッド)を丁寧にクリーニングした後、専用のステンシルとはんだボールを使用してCPUに新しいはんだボールを配置し、正確な位置に再実装しました。

Xperia 5 Ⅲ基板修理

Xperia 5 Ⅲ基板修理

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第二の問題発見:2層基板の中間層はんだ浮き

CPU再実装後、期待を持って充電器を接続してテストを行いました。すると、今度はバッテリーマークが画面に表示されるようになりました。これはCPU修理が成功し、端末が起動プロセスに進めるようになった証拠です。

Xperia 5 Ⅲ基板修理

しかし、喜びもつかの間、バッテリーマークが表示された直後に画面がすぐ消えてしまうという新たな症状が現れました。この症状は、起動プロセスのより深い段階で何らかの問題が発生していることを示しています。

再度、基板を顕微鏡下で詳細に検査しました。すると、Xperia 5 Ⅲの特徴的な2層基板構造において、中間層のはんだ部分が浮いてしまっているのを発見しました。

2層基板とは、2枚の基板が積層された構造で、スペース効率を高めるためにハイエンドスマートフォンでよく採用されています。この2層の接続部分にあるはんだ接合が何らかの原因で浮いてしまい、電気的接続が不安定になっていたのです。

Xperia 5 Ⅲ基板修理

おそらく、もともとこの中間層のはんだに軽微な劣化があり、CPU再実装時の加熱でさらに浮きが顕在化したと考えられます。あるいは、最初の故障発生時の熱ストレスで複数箇所に同時にダメージが発生していた可能性もあります。

Xperia 5 Ⅲ基板修理

第二段階の修理:中間層はんだ浮きの修正

中間層のはんだ浮きを修正するため、ヒートガンを使用した修理を行いました。この作業は非常にデリケートで、適切な温度と時間の管理が求められます。

まず、浮きが確認された箇所を特定し、周辺部品を保護するための対策を施します。その後、ヒートガンで適切な温度(通常380℃程度)に設定し、浮いてしまっているはんだ部分に熱を加えていきます。

はんだが再溶融する温度に達すると、表面張力によってはんだが元の位置に戻り、適切な接合状態に回復します。加熱しすぎると周辺部品にダメージを与える可能性があるため、温度と時間を慎重にコントロールしながら作業を進めました。

顕微鏡で確認しながら、浮いていたはんだ部分が正常な状態に戻ったことを確認しました。2層基板の層間接続が回復したことで、電気的な信号伝達が正常に行われるようになります。

修理完了:起動成功とデータ復旧

中間層のはんだ修正作業が完了した後、基板を端末本体に戻し、すべてのコネクタを接続して最終テストを行いました。

充電器を接続すると、今度は正常に赤いランプが点灯し、充電が開始されました。しばらく充電した後、電源ボタンを押すと、Xperiaのロゴが表示され、無事に端末が起動しました。画面表示も正常で、タッチ操作にも問題なく応答します。

Xperia 5 Ⅲ基板修理

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そして何より重要なのは、お客様の大切なデータがすべて無事だったことです。写真、連絡先、アプリのデータ、メッセージなど、端末内のすべての情報が保持されており、完全なデータ復旧に成功しました。

起動しない状態では、お客様はデータのバックアップも取れず、大変不安な思いをされていたことと思います。今回の基板修理により、貴重なデータを救出できたことは、私たち修理技術者にとっても大きな喜びです。

まとめ:複合的故障への対応とデータ復旧の重要性

今回のXperia 5 Ⅲ修理事例は、一つの症状に対して複数の故障原因が存在するケースでした。CPUのはんだクラックと2層基板の中間層はんだ浮きという、2つの問題を段階的に解決することで、最終的にデータ復旧を実現できました。

このような複合的な故障は、一度の修理では完全に直らないこともあり、症状を観察しながら段階的に診断と修理を進める必要があります。顕微鏡による精密な観察と、豊富な経験に基づく的確な判断が求められる、まさに基板修理技術者の腕の見せ所です。

ストックリペアでは、修理店様からのご依頼も承っております。他店で対応が難しい基板レベルの修理、データ復旧が必要な案件など、高度な技術が求められる修理をお任せください。埼玉県熊谷市の店舗での修理はもちろん、全国どこからでも郵送修理のご依頼を受け付けております。

対応修理内容:

  • スマホ基板修理(iPhone、Android各機種)
  • データ復旧サービス
  • 起動不良・電源が入らない症状
  • 複合的故障への対応
  • 修理店様からのご依頼も歓迎
  • 郵送修理対応(全国対応)

スマートフォンが起動しない、大切なデータを取り出したい、他店で修理不可と言われたなど、お困りの際はお気軽にご相談ください。基板修理のプロフェッショナルとして、お客様の大切なデータをお守りいたします。



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